「放浪の天才数学者エルデシュ」 ポール ホフマン (著), 平石 律子 (翻訳):草思社(刊)
この宇宙一の奇人にして天才のエルデシュは「博士の愛した数式」小川洋子(著)の主人公のモデルと思われる。
こんな人が実在していたなんて、本当に信じられない。
今だに、僕は「これって、巧妙に作られたフィクションじゃないの?」と思ってしまうほどだ。
しかし、奇跡的に、実話である。
どこにも所属せず、定住地を持たず、古びたブリーフケースには替えの下着とノートのみ。
世界中を放浪しながら、一日十九時間、数学の問題を解きつづけたという伝説の数学者、ポール・エルデシュ。
四大陸を飛びまわり、ある日突然、戸口に現れて言う。
「君の頭は営業中かね?」
あなたならどう答える?
「いいえ、休業中」です?とか・・・・・・。
八十三歳で死ぬまでに、発表した論文は1500、有史以来どんな数学者よりもたくさんの問題を解き、しかもそのどれもが重要なものであったという。
悩める奇才ゲーデルを励まし、アインシュタインを感服させたエルデシュ唯一のライバルは、美しい証明を独り占めしている「神さま」だけだった。
子供とコーヒーと、何よりも数学をひたすら愛し、史上最高の数学者にして宇宙一の奇人。
数学の世界をかくも面白くした天才のたぐいまれなる人生を描いた本。
こんなふうに生きてみたいよね?
実に!面白い本である。
読み始めたら止められなくて最後まで一気に読んでしまった。
その「面白さ」にはいろいろな要素があって,笑いがあり,驚きがあり,ドキュメンタリーな迫力があり,知的な収穫も大きいが,最も感動的なのは,常識はずれの天才をとりまく支援者の優しい心と,エルデシュ自身の純粋で真摯な生き方である。
金銭に執着せず,持っている金は困っている人にあげてしまい,研究の業績に対して贈られた高額の賞金も奨学基金に寄付してしまう。
論文の発想を惜しみなく若い研究者に分け与え,数多くの後輩を育てた。
日本語版の書名の通り,エルデシュは類いまれな天才であり,自宅を持たずに友人の家を泊まり歩く放浪の数学者であった。
また奇行の多いことでも有名で,表紙にはコミカルなイラストが掲げられ「宇宙一おかしな男」というキャッチコピーが添えられている。
しかし,本書は変人を追いかけたゴシップ集ではない。
確かに想像を絶する「常識はずれ」のエピソードがたくさん紹介されているが,それだけが本書の目的ではない。
原著の書名は"The man who loved only numbers"(数学だけを愛した男)であって,1日に19時間も数学の研究に打ちこみ,83歳で亡くなる瞬間まで研究を続け,1475本もの論文を書いた学究エルデシュと数学のかかわりあいを詳しく紹介している。
著者はサイエンティフィックアメリカンの編集者などを歴任したジャーナリストで,エルデシュの魅力にとりつかれ,十数年にわたって取材を続けた成果が本書である。
さすが一流のジャーナリストによって書かれただけあって読みやすい。
数論やグラフ理論の面白さを,一般の読者にも理解できる言葉で巧みに解説している。
取り上げられている話題は広く,エルデシュが直接手がけたグラフ理論や数論のほか,数学基礎論,暗号理論,非ユークリッド幾何学など周辺の話題にもかなりのページを割いている。
また,ラマヌジャン,ハーディ,ゲーデル,カントール,グラハム,レーマー,ベルマン,ノイマン,クラインなど,同時代の数学者もたくさん登場する。
エルデシュは1913年にハンガリーのブダペストに生まれた。
そのハンガリーの歴史や第1次世界大戦,第2次世界大戦を経て今日までの社会的背景(特にユダヤ人問題)の記述も興味深い。
昔,数学者岡潔の生涯を描いた「好人好日」という映画があったが,そこでは数学的内容についてまったく触れていなかった。
それに対し本書では,エルデシュが研究した数学の問題をかなり詳しく紹介しており,数学の面白さが生き生きと描かれている。
素数や図形の好きな数学愛好家に最適の読み物。
訳文はこなれた日本語で読みやすく数学的にも正確である。
私たちが住んでいる「この世の中」は、どうして、これほど美しい数学が成り立つ世界なのだろう?
そして、どうして、こうも純粋に生きていける人がいるのだろう?
あこがれてしまう。
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