不老不死、不滅の象徴である火の鳥を巡るエピソードを描く大河ドラマならぬ大河マンガ。
メッセージ性の強いものから娯楽性の強いものまで、作者がライフワークとしていたのもうなずける、とても充実した内容だ。
いつの時代も変わらない人間の欲望の醜さと愚かさ、科学万能主義への警鐘、人類の行き着く先への不安などなど、他の手塚作品でもよく扱われているものが、本作でも強く読み取れる。
が、なによりも、作者の大きな想像力・創造力としっかりとした構成のもと、マンガの楽しさおもしろさが十二分に味わえる傑作だ。
女帝「卑弥呼」から「宇宙の片隅の惑星にころがるロボット」、「ロボットに恋する青年」、「猿田彦神話」、「生命誕生の謎」「神とは?」・・・・など等。
古代から未来、ミクロからマクロまで時間も空間も飛び越えながら、ストーリーは進む。
結局、手塚治虫は「人生とは何か」「人間とは何か」「宇宙とは何か」という人類が永遠に持ち続けている疑問を描き続けていた。
それは、「鉄腕アトム」だろうと「ブラック・ジャック」「アドルフに告ぐ」「陽だまりの樹」と漫画のタイトルは変わっても、テーマは一貫していた。
僕は、この火の鳥シリーズで、人生を応援してもらった。
火の鳥が「生きるのよ。」と後ろから囁いてくれる。
漫画が市民権を得て、学校の図書館に置かれるところまで持っていった「漫画の神様」の手塚治虫に敬意を表する。
この後「アトム編」を描く予定だったそうですが、果たされないままだったのが、なんとも悔やまれます。
●火の鳥 (1) (角川文庫)
【関連する記事】
- お勧めの面白い本★『幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉』
- 超お勧めの本★『日本人と神様』〜ゆるやかで強い絆の理由〜
- ●お勧めの本★『0葬 ──あっさり死ぬ』島田 裕巳著
- ●お勧めの本★『誰にも死ぬという任務がある』曽野綾子著
- お勧めの小説『弥勒』篠田 節子著
- 人生の不条理を表した不朽の名作『ペスト』カミュ著
- オススメの傑作警察モノのお勧め小説★スウェーデンの最高傑作警察物語「笑う警官」シ..
- ラストシーンが最も衝撃的な漫画とは?●僕らの世代の男性(女性)なら
- いろんな意味で重たいがお勧めの本●『決壊』(平野 啓一郎
- 人生について考えてみたいときにおすすめの小説★『四日間の奇蹟』(浅倉 卓弥 )
- オススメのミステリィ●死ぬのは1年だけ待って●『チェーン・ポイズン』(本多 孝好..
- オススメのミステリィ●死ぬのは1年だけ待って●『チェーン・ポイズン』(本多 孝好..
- 人の道を外してもいい■おすすめの本・物語:僕の人生に影響を与えた本ベスト10(そ..