起きる起きないが問題なのではない。
それは必ず起きる。
だから、今から何をしなければならないのか。
独自のハザードマップを作り、地震対策に努める26歳の市役所防災課職員がいた。
だが、大地震が連続して発生。空前の大津波が太平洋岸を襲う!
そのとき恋人は、超高層ビルの建築主は、原子力発電所の職員は、自衛隊員は、首相は、どう運命と向き合ったのか!?大迫力の防災サスペンス作品。
東日本大震災前に書かれた小説とは思えないほどのリアルな描写でした。
特に、津波の描写は非常にリアルで恐ろしいほどです。
また、原子力発電所での事故なども想定されており(幸いな事に話中では大事には至りませんでしたが)、震災時における様々なシミュレーションが正確に描かれている事に驚かされました。
執筆時点で言えば近未来シミュレーション小説になるだろうか。
この時点で東海、東南海、南海連動地震を想定し地震、津波の脅威を提唱している点は素晴らしいし、2年前の東日本大震災後にクローズアップした3地震連動津波にも影響を与える作品である。
この作品で一番共鳴した点は本文中の次の言葉です。
「地震は地球の息吹です。くしゃみをしたり、寝返りをうったりしているだけです。四六億年の地球の歴史の中で地殻の流動は大陸を動かし、海底を押し上げ、山脈を創りました。そして、その営みこそが生命を創造し、不毛の惑星を緑の大地に変えました。人間はそんな欠伸にも及ばない地球の気まぐれを気にするより、それに対応した生き方を考えるべきです」。
2005年初版。
ジュール・ヴェルヌではないが、書く人と言うのはどうしてこう予知夢の様に先の事を想像し、映像を見ている様に的確に書くのか、といつも不思議に思う。
著者の本は常にfacts & figuresに基づいて書かれている、と感じた。
2005年の段階で何故、津波のことをここまでリアルに書けるのか!
3.11、を経験し、その映像を幾度となく見た私達でも、津波と言えば迫り来る津波だけしか想像出来ないが、津波によって船舶の事故が複合災害に発展する様、原子力発電所の地震・津波による事故...著者が過去に原子力関係の仕事にいたから当然と言えば当然かも知れないが...をここまで描ける作家の感性に脱帽です。
耐震疑惑は既に過去のものになった様な観があるが、あれは氷山の一角だったのだろう。
企業の施設建築を担当する部門に居た人に言わせると、絶対頼みたくないゼネコンは、XX建設、○○建設、▲▲工務店etc.と直ぐに名前が5−6社上がる処を見ると決してストーリーだけの話では無さそうだ。
本書では、超高層ビルの完成披露祝賀会を襲った巨大地震が不適切な建材や耐震性を暴いて行く。
江戸時代に津波の破壊力を分散する為に東京湾に面して運河が張り巡らされた、と聞いたが、既にその大半は埋め立てられてしまっている。
その代わりに、東京でも河川には水門が設置され、台風の時には活躍してはいるが、きっと本書にあった様に巨大地震の場合は、電動の開閉も停電のため手動で動かすとなれば、それなりの時間が掛かるに違いない。
地震で曲がったり破損すれば、用をなさないことも在り得るのだろう。
京大の鎌田浩毅教授は、『生き抜くための地震学』の中で過去の地震を調査することによって、東海、東南海、南海に日向沖、沖縄と接する部分が加わり、五連動した可能性を指摘されている。
更には、従来震源域とされた部分ももっと幅が広く設定されたようだ。
つまりは3.11.と同じ可能性が西日本にもある、という事だ。
しかし、本書にある様に経済に及ぼす影響は比較にならない程大きい。
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