館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。
やがて学生たちを襲う連続殺人。
ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!
’87年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作。
たった一行の記述で視界が開ける、この展開は思わず拍手を送りたくなるほど、奇抜で、鮮やかです。
最初にそのページを目にした瞬間、その瞬間にそれまでの世界が結びつき、ひっくりかえる。
読み終わってしまった今は、もう二度と同じ衝撃を味わえないことが残念ですらあります。
絶海の孤島で脱出不可能、そこで巻き起こる連続殺人。と、悪く言えば使い古されたような舞台設定ですが文章のテンポのよさと、二つの舞台の同時進行など、構成の工夫でスムーズに読み込んでいけました。
ワクワクさせる展開に(ミステリ的な意味で)、映像では再現できない構成、その伏線の張り方、そして過去の名作達に対する親愛の情がいい。
綾辻行人のデビュー作です。
「綾辻以後」という言葉が生まれたほど、彼の登場は衝撃的でした。
彼が失敗していれば、いまの本格ムーブメントがこれほど盛り上がりを見せていたかどうか、甚だ疑問であると同時に、その先駆者が綾辻行人であったということに何か宿命みたいなものを感じずにはいられません。
さて、この「十角館の殺人」ですが、数人の人間が孤島へ行き、そこでひとりまたひとりと殺されていき、最後には・・・・・・、
というようにプロットはクリスティの「そして誰もいなくなった」です。
読み始めてすぐに浮かんできた言葉が「青いな」でした。
それは、登場人物が大学のミステリ研であるとか、ニックネームで呼び合うとか、そういうところが実生活の延長をただ著しているだけのように感じられて鼻についたのです。が・・・・・・。
ネタバレになるといけないので深く触れませんが、私は、「青い」と思った時点で綾辻さんに負けていたのです。
今もはっきりと覚えています。ラスト近くの例の一行を読んだときのあの衝撃を。
頭が真っ白になり、しばらく呆然としてしまいました。
大げさではなく、5分間ぐらい動けませんでした。それほどのショックでした。
そして、「やられた! 騙された!」とひとりで叫んでいました。
気持ちのいい敗北感でした。
すべてはここから始まったのだと、いま改めて思います。
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