2014年05月06日

不死は幸せか?『命の遺伝子』高嶋 哲夫著

ベルリンでの講演直後、天才遺伝子科学者トオル・アキツは何者かに攫われ、爆破事件で吹き飛ばされた男の手首を見せられた。

四十代のものに見える手首の主は、生きていれば百歳を超えるナチス武装親衛隊の大佐だという。

謎を解明するためブラジルの奥地へ向かったトオルの前に、ナチスの壮大な陰謀が姿を現す。


高嶋哲夫氏は、日本では過小評価されていると思う。

「イントルーダー」「スピカ」「トルーマンレター」「ペトロバクテリアを追え!」「ミッドナイトイーグル」など、どれをとっても超一流の作品で、私個人としてはハリウッドのプロデューサーが読んだらマイケル・クライトンのように、ほとんどすべての著作が映画化されてもおかしくないだろうな、と思っていた。

そして今回の「命の遺伝子」だ。

本の帯にも「ハリウッドを超えた」と書かれていたが、文字通り映画化を前提に考えられたかのような作品だ。

キャラクター、舞台、予想のつかない展開。日本映画界はとっとと映画化権を抑えないと、全部ハリウッドに持っていかれてしまうぞ。


トオル・アキツが主人公。ドイツのベルリンから物語は始まる。

彼は遺伝学者である。

そのころ,ネオナチの集会で爆発があった。

ナチスの戦犯を追っている組織が,爆発の後,ある人の手首を回収した。

その人物の推定年齢,112歳。

しかし,その手首を見る限り,彼は40代としか思えない。いったいどうなっているのか…
 

最初に提示された謎に加え,アクション・シーンもあり,エンターテインメントとしては十分に成立している。

引きこまれて最後まで,というほどではないが,楽しみながら読める。

文章もすっきりしていて読みやすい。

ただ,遺伝子スリラーとしては最高のものとはいえない。

私が読んだ作品の中では,「イエスの遺伝子」が傑作だった。

それほどではないが,この小説のテーマも悪くはない。

十分に読ませる力は持っている。


ある登場人物が言う。

「人は死があるからこそ人と言えるのです」と。

私たちはみんな不老不死を願う。

しかし,それが実現した時,果たして幸せといえるのか。

家族も友人も子供も,もちろん師と呼べる人も,すべて死んでいく。

しかし,自分だけは生き続け,愚かな人間たちの営みを見続けなければならない…そう考えた時に,死は恐怖であると同時に一種の救いでもあることに気が付く。


人間らしい死が迎えられればいい。

それが神の望みならば…この本のテーマは根元的で,重い。

「永遠なんてない。今が全てだ。」

「運命はDNAが決めるのではない。自分で切り拓いていくものだ。」

・・・・・・など等、金言も多いことも楽しめる。






【関連する記事】
posted by ホーライ at 03:03| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・ミステリィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。