ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。
外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。
生と死、善と悪、そして神の救済の意味を問うた長編。
かつて熱烈なキリスト教信者であったカミュは、創作を通じて神の存在を問い続けた。
「ペスト」はカミュの作品中、もっとも大きな構想、長いストーリー、たくさんの登場人物を擁した傑作だ。
タルーを始めとする登場人物は、必死に思考し、行動する。
ペストが蔓延した街は封鎖され、ストーリーは一気に加速する。
最後はどうなるのか、読者も惹き込まれる。
テーマはずしりと重いのだが、「ペスト」は娯楽小説としてのクオリティーが素晴らしく高い。
アルジェリアの港町の描写がすばらしくエキゾチック。
このノーベル賞作家の作品中、もっとも大衆的でもあると思う。
そこが特筆すべき点なのだ。
『ペスト』(仏: La Peste)は、アルベール・カミュが書いたフランスの小説。
出版は1947年。
ペストに襲われたアルジェリアのオラン市を舞台に、苦境の中、団結する民衆たちを描き、無慈悲な運命と人間との関係性が問題提起される。
医者、市民、よそ者、逃亡者と、登場人物たちはさまざまだが、全員が民衆を襲うペストの脅威に、助けあいながら立ち向かう。
よく言われるのは、この作品は第二次世界大戦時のナチズムに対するフランス・レジスタンス運動のメタファーではないかということだ。
さらに、実存主義文学の古典とも言われるが、カミュはこのレッテルを嫌っていた。
語り口は、個々のセンテンスが複数の意味を内包し、その一つが現象的な意識および人間の条件の寓意である点で、カフカの小説、とくに『審判』に通じるものがあると言われている。
カミュのアプローチは非情で、語り手である主人公は、自分たちは結局何もコントロールできない、人生の不条理は避けられないという考えを力説する。
カミュは不条理に対する人々のさまざまな反応を例示し、いかに世界が不条理に満ちているかを表している。
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