2014年06月15日

お勧めの小説『阪急電車』

●お勧めの小説『阪急電車』


他愛とないば他愛のない話だ。

隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった…。

片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。

乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。

恋の始まり、別れの兆し、途中下車―人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。


兵庫県の西宮市と宝塚市を結ぶ、阪急電鉄の支線を舞台にした、オムニバス形式の小説。

最初のエピソードは、図書館で同じ本を借りようとしたことをきっかけに男女が出会う、という超古典的な話。

まずは読者をほのぼのさせながら、次の章では、昔の恋人達への当てつけのためにウェディングドレス姿で披露宴に出席する女性を描いた、少し刺のある話が展開される。

なかなか面白く読める小説だった。

見事な舞台設定と場面切替え。

読みやすく、視覚に訴える描写。

わずか8駅しかない阪急電鉄今津線。

ひと駅ごとにニアミスを重ねながら、巧みに主役が交替してゆく。



まずは、往路。

宝塚から西宮北口行き。

ちょっとしたきっかけの男女の出会い。

冴えない友人に婚約者を寝獲られた復讐に燃える美女。

小さい孫を連れている夫に先立たれた老婦人。

乱暴な男に必死に連れ添う女子学生。

ちょっと背伸びしている騒がしい女子高校生たち。

彼女いない歴イコール年齢と彼氏いない歴イコール年齢の2人。



そして折り返し。

しかし、時は流れて半年後。

そしてまた、ひと駅ごとに主役達が切り替わる。

ブランドもののカバンを持つ騒がしいオバサン軍団の失礼な席取り合戦を皮切りに、往路で登場した人たちのその後のドラマが次々展開する。



ドレス。途中下車。燕。携帯電話。ランドセル。ミニュチュア・ダックスフンド。日本酒。


恋。嫉妬。喜び。強がり。寂しさ。涙。そして笑顔。


それぞれの物語が、沿線独自の雰囲気に包まれて、巧みにつながってひとつの世界が形成される。

女流作家らしい細やかな心理描写。

最初の女性の名前が復路の宝塚南口まで伏せられていたり、ちょっとした工夫もいくつかある。


もちろん、これはあくまでお話。

こんな都合の良い出会いばかりありえないだろうなんて、野暮なことは言いっこなし。

阪急今津線に幸あれ。









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posted by ホーライ at 16:44| Comment(0) | TrackBack(0) | より楽しく生きるために | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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