2014年04月17日

千年残したい名作『果しなき流れの果に』小松 左京

N大教授大泉とK大教授番匠谷は、高校時代の同窓。

共にマッド・サイエンティストと称される夢想家である。

ある日、番匠谷が大泉のもとに古墳からの奇妙な出土品を持参した。

それは、永遠に砂が落ち続ける砂時計。

上部と下部との間には異次元空間が?


一行は再び発掘現場へ調査に赴くが、未盗掘の玄室には何もなく、羨道の先は行きどまりになっていた…。

SF界の巨匠が放つ超時空小説。

「宇宙」とは、「時の流れ」とは何かを問うSFの傑作。



時間ものSF。

ひとことで言えばそう言える。

しかし、このイマジネーションの大きさはどうだ!

こんな作品は若いときしか書けまい。



「日本沈没」からも40年近くが経とうとしている。

この作品が書かれた当時、科学の概念がどの程度だったのか、未来の展望がどのようだったのか、詳しくは知らない。

しかし、タイム・マシンの実現化は、確実に夢の中にあった。

現在では夢さえも見られない。

そんな時代だったからこそ、本作のイメージを著者が描くことができたのかも知れない。



「人類の進歩と調和」は夢と消えた。

著者の思い描いた未来に、我々は立っていないのかもしれない。

だからこそ、本作を今読む意味があると思う。

個人的には、最後に老人ふたりが静かに余生を送るところが好きだ。

彼女のそばに彼はいたのだろうか。

一生のうち、ピンポイントにでも彼は彼女を見に現れたのだろうか。

彼女の一生を思うと、読んでいて涙が浮かんでくる。



光瀬「百億の昼と〜」と並び称される作品である。

質・量ともに甲乙つけがたいが、私はこっちが好きだ。

広瀬「マイナス・ゼロ」を読んだときにも同じような感動を覚えた。

時間というものは、なぜか郷愁をさそうものだ。

おそらく、実際には二度と帰ってこないものだからであろう。

我々は、過去は振り返ることしかできないのであるから。


人間の世界を超えた奥の院にある世界を体験できる凄まじい作品。

小松左京以外の人には書けないだろう。

千年残したい名作。



非の打ち所がないとは言いませんが(特に一つのクライマックスである流れの果ての描写がはしょりすぎて甘い)エネルギッシュでドラマチックな作品でした。

前菜(プロローグ)、メインディッシュ(1-10章)、デザート(エピローグ)それぞれが味わい深く描き分けられさながらフルコース・ディナー。

そこらの作品とは食べごたえ満足感が違います。

壮大な宇宙に比べれば人間の一生なんてちっぽけなものだよ、とはならない。

1個の人間の短い一生と宇宙の歴史が最後の最後に等価に並べられる構成は圧巻で感動的です。










posted by ホーライ at 03:04| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・ミステリィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月13日

驚愕の最後の2行。二度見は間違いない「イニシエーション・ラブ」乾 くるみ

僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。

やがて僕らは恋に落ちて…。


甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説―と思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。

「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。

読み終えた後が本当の始まり。

巧妙なトリックが仕込まれています。

それに気がついた時には、「あれ!?」と思わず声を出して、物語の最初のほうを読み直すほど驚きました。

こころからお勧めします







posted by ホーライ at 09:55| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・ミステリィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月11日

1行で世界がひっくり返る★十角館の殺人

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。

館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。

やがて学生たちを襲う連続殺人。


ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!

’87年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作。


たった一行の記述で視界が開ける、この展開は思わず拍手を送りたくなるほど、奇抜で、鮮やかです。

最初にそのページを目にした瞬間、その瞬間にそれまでの世界が結びつき、ひっくりかえる。

読み終わってしまった今は、もう二度と同じ衝撃を味わえないことが残念ですらあります。


絶海の孤島で脱出不可能、そこで巻き起こる連続殺人。と、悪く言えば使い古されたような舞台設定ですが文章のテンポのよさと、二つの舞台の同時進行など、構成の工夫でスムーズに読み込んでいけました。

ワクワクさせる展開に(ミステリ的な意味で)、映像では再現できない構成、その伏線の張り方、そして過去の名作達に対する親愛の情がいい。




綾辻行人のデビュー作です。

「綾辻以後」という言葉が生まれたほど、彼の登場は衝撃的でした。

彼が失敗していれば、いまの本格ムーブメントがこれほど盛り上がりを見せていたかどうか、甚だ疑問であると同時に、その先駆者が綾辻行人であったということに何か宿命みたいなものを感じずにはいられません。

さて、この「十角館の殺人」ですが、数人の人間が孤島へ行き、そこでひとりまたひとりと殺されていき、最後には・・・・・・、

というようにプロットはクリスティの「そして誰もいなくなった」です。

読み始めてすぐに浮かんできた言葉が「青いな」でした。

それは、登場人物が大学のミステリ研であるとか、ニックネームで呼び合うとか、そういうところが実生活の延長をただ著しているだけのように感じられて鼻についたのです。が・・・・・・。


ネタバレになるといけないので深く触れませんが、私は、「青い」と思った時点で綾辻さんに負けていたのです。

今もはっきりと覚えています。ラスト近くの例の一行を読んだときのあの衝撃を。

頭が真っ白になり、しばらく呆然としてしまいました。

大げさではなく、5分間ぐらい動けませんでした。それほどのショックでした。

そして、「やられた! 騙された!」とひとりで叫んでいました。

気持ちのいい敗北感でした。

すべてはここから始まったのだと、いま改めて思います。








posted by ホーライ at 02:06| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・ミステリィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月05日

本格派ミステリィの金字塔■騙される快感「十角館の殺人」

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。

館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。

やがて学生たちを襲う連続殺人。

ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける


たった一行の記述で視界が開ける、この展開は思わず拍手を送りたくなるほど、奇抜で、鮮やかです。

最初にそのページを目にした瞬間、その瞬間にそれまでの世界が結びつき、ひっくりかえる。

読み終わってしまった今は、もう二度と同じ衝撃を味わえないことが残念ですらあります。


ワクワクさせる展開に(ミステリ的な意味で)、映像では再現できない構成、その伏線の張り方、そして過去の名作達に対する親愛の情がいい。

綾辻行人のデビュー作です。

「綾辻以後」という言葉が生まれたほど、彼の登場は衝撃的でした。

彼が失敗していれば、いまの本格ムーブメントがこれほど盛り上がりを見せていたかどうか、甚だ疑問であると同時に、その先駆者が綾辻行人であったということに何か宿命みたいなものを感じずにはいられません。

さて、この「十角館の殺人」ですが、数人の人間が孤島へ行き、そこでひとりまたひとりと殺されていき、最後には・・・・・・、というようにプロットはクリスティの「そして誰もいなくなった」です。


今もはっきりと覚えています。ラスト近くの例の一行を読んだときのあの衝撃を。

頭が真っ白になり、しばらく呆然としてしまいました。

大げさではなく、5分間ぐらい動けませんでした。それほどのショックでした。

そして、「やられた! 騙された!」とひとりで叫んでいました。

気持ちのいい敗北感でした。

すべてはここから始まったのだと、いま改めて思います。









posted by ホーライ at 14:21| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・ミステリィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

既に古典とも言うべきSFの名作■「星を継ぐもの」

月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。

綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。

果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。

やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。

ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。



人類の起源について想像を絶するような仮定を本格ミステリの要素をふんだんに盛り込んで編み上げたハードSF巨編です。

にこの作品は、人間というのは果てしない想像力を備えた偉大な生き物なのだということを感じさせ、脳髄がしびれるような心地よい読書体験を与えてくれました。


長編SF小説の中でもベスト10級の面白さ。

無駄な部分が無く、一気に読ませる。

最後までぐいぐい引っ張る謎と、驚きの解明

登場人物の魅力もあり、設定や科学的な古さも感じられない。

SF好きで、いえ、全ての読書家の方々へ、まだ読んでない人は損してます。


ミステリーとしても秀逸な展開です。

最初に謎が提示され、それを様々な分野の高度に専門的な知識を用いて推論をたて、未知の文字の解読などを進めてゆくと、更なる謎が現れる……。

深まる謎が読み手を惹きつけ、頁を繰る手が止まりません。

そして真相が明かされた時の驚きと爽快感。

そうきたか!と唸らされました。







posted by ホーライ at 12:15| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・ミステリィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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