2014年04月05日

恐ろしいフィクション「津波」の恐怖■3.11の前に書かれた作品とは思えない!「TSUNAMI」

東海大地震。

起きる起きないが問題なのではない。

それは必ず起きる。

だから、今から何をしなければならないのか。

独自のハザードマップを作り、地震対策に努める26歳の市役所防災課職員がいた。

だが、大地震が連続して発生。空前の大津波が太平洋岸を襲う!

そのとき恋人は、超高層ビルの建築主は、原子力発電所の職員は、自衛隊員は、首相は、どう運命と向き合ったのか!?大迫力の防災サスペンス作品。




東日本大震災前に書かれた小説とは思えないほどのリアルな描写でした。

特に、津波の描写は非常にリアルで恐ろしいほどです。

また、原子力発電所での事故なども想定されており(幸いな事に話中では大事には至りませんでしたが)、震災時における様々なシミュレーションが正確に描かれている事に驚かされました。



執筆時点で言えば近未来シミュレーション小説になるだろうか。

この時点で東海、東南海、南海連動地震を想定し地震、津波の脅威を提唱している点は素晴らしいし、2年前の東日本大震災後にクローズアップした3地震連動津波にも影響を与える作品である。

この作品で一番共鳴した点は本文中の次の言葉です。

「地震は地球の息吹です。くしゃみをしたり、寝返りをうったりしているだけです。四六億年の地球の歴史の中で地殻の流動は大陸を動かし、海底を押し上げ、山脈を創りました。そして、その営みこそが生命を創造し、不毛の惑星を緑の大地に変えました。人間はそんな欠伸にも及ばない地球の気まぐれを気にするより、それに対応した生き方を考えるべきです」。




2005年初版。

ジュール・ヴェルヌではないが、書く人と言うのはどうしてこう予知夢の様に先の事を想像し、映像を見ている様に的確に書くのか、といつも不思議に思う。

著者の本は常にfacts & figuresに基づいて書かれている、と感じた。



2005年の段階で何故、津波のことをここまでリアルに書けるのか!

3.11、を経験し、その映像を幾度となく見た私達でも、津波と言えば迫り来る津波だけしか想像出来ないが、津波によって船舶の事故が複合災害に発展する様、原子力発電所の地震・津波による事故...著者が過去に原子力関係の仕事にいたから当然と言えば当然かも知れないが...をここまで描ける作家の感性に脱帽です。



耐震疑惑は既に過去のものになった様な観があるが、あれは氷山の一角だったのだろう。

企業の施設建築を担当する部門に居た人に言わせると、絶対頼みたくないゼネコンは、XX建設、○○建設、▲▲工務店etc.と直ぐに名前が5−6社上がる処を見ると決してストーリーだけの話では無さそうだ。

本書では、超高層ビルの完成披露祝賀会を襲った巨大地震が不適切な建材や耐震性を暴いて行く。



江戸時代に津波の破壊力を分散する為に東京湾に面して運河が張り巡らされた、と聞いたが、既にその大半は埋め立てられてしまっている。

その代わりに、東京でも河川には水門が設置され、台風の時には活躍してはいるが、きっと本書にあった様に巨大地震の場合は、電動の開閉も停電のため手動で動かすとなれば、それなりの時間が掛かるに違いない。

地震で曲がったり破損すれば、用をなさないことも在り得るのだろう。



京大の鎌田浩毅教授は、『生き抜くための地震学』の中で過去の地震を調査することによって、東海、東南海、南海に日向沖、沖縄と接する部分が加わり、五連動した可能性を指摘されている。

更には、従来震源域とされた部分ももっと幅が広く設定されたようだ。

つまりは3.11.と同じ可能性が西日本にもある、という事だ。

しかし、本書にある様に経済に及ぼす影響は比較にならない程大きい。






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posted by ホーライ at 10:21| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・ミステリィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月04日

オススメのミステリィ●死ぬのは1年だけ待って●『チェーン・ポイズン』

あと1年。

死ぬ日を待ち続ける。

それだけが私の希望――。

かりそめに生きることは、もうできない。

選んだのは「死」。



一方で、不思議な自殺の連鎖を調べる記者。

そこに至るただひとつの繋がり。

「生」の意味を現代に投げかける、文句なしの最高傑作!




誰にも求められず、愛されず、歯車以下の会社での日々。

簡単に想像できる定年までの生活は、絶望的な未来そのものだった。

死への憧れを募らせる孤独な女性にかけられた、謎の人物からのささやき。

「本当に死ぬ気なら、1年待ちませんか? 1年頑張ったご褒美を差し上げます」

それは決して悪い取り引きではないように思われた――。



「この先、このまま生きていっても、きっと何も変わらないだろう」と、自分の人生に絶望し、自殺することに決めた女性。

死を決意した彼女の一年間を追っていく話をAとすると、複数の自殺者の死の特異な共通点に気がつき、その真相を調査していく週刊誌記者の話はB。

AとB、今から一年と数ヶ月前に話がはじまる前者と、ある共通点が見受けられる自殺が続いた現在から話がはじまる後者が交錯する形で、ストーリーが進んでいくミステリ。

終盤に向かうに連れてぐんぐん面白くなっていき、目が離せなくなってしまう。



一年後に自殺することを心の拠り所にして生きていく女性の変貌、生き生きとした人間らしさを取り戻していく姿、その変化が魅力的に描き出されている。

そこが、まず素晴らしい。

一年間の暇つぶしのためにとボランティアすることになった養護施設で、子どもたちやスタッフと過ごしていく中、彼女は変わっていく。

終盤、彼女の心境と行動の変化にすっかり魅せられ、胸にこみ上げてくるものがある。


さらに、ある場面で、ある絵柄ががらりと変わり、「えっ!!??」と仰天させられる。

全く念頭になかったので、これにはすっかりダマされてしまった。

背負い投げ一本、てな感じですかね。

著者に投げ飛ばされてから、あわてて前の頁に戻って読み返しまして、「ああ、不覚。ああ、錯覚」と、自分の頭をこつんと叩いた次第。



ミステリー小説とも言えるが、ミステリーの境地を超えた「生」と言うテーマが、根底に流れている。

「死」というテーマを全面に押し出し「生」の意味を考える。

すばらしい構成になっている。

文体も平易で、読みやすく、いっきに読める(と言うか、目が離せなくなる)。



人間、いつ死ぬのかわからないからこそ、今日という日を一生懸命生き らるのかもしれない。

本を閉じて、ふとそう感じた。



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2014年04月03日

宮部みゆきのお勧め本★『おそろし 三島屋変調百物語事始』

17歳のおちかは、実家で起きたある事件をきっかけに、ぴたりと他人に心を閉ざしてしまった。

ふさぎ込む日々を、江戸で三島屋という店を構える叔父夫婦のもとに身を寄せ、慣れないながら黙々と働くことでやり過ごしている。

そんなある日、叔父・伊兵衛はおちかを呼ぶと、これから訪ねてくるという客の対応を任せて出かけてしまう。

おそるおそる客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていく。

いつしか次々に訪れる人々の話は、おちかの心を少しずつ溶かし始めて…哀切にして不可思議。

宮部みゆきの「百物語」、ここに始まる。



江戸の神田三島町の一角に店を構える袋物屋の三島屋。

訳あって、その店の主人である叔父夫婦のもとに預けられ、働くことになった十七歳のちかが、店の「黒白の間」で、そこを訪れる人たちの不思議で怪しい話を聞いてゆく。

不思議で怪しい、切なさと怖さ、恨みと憎しみ、割り切れぬ思いなどが絡まり合ってゆく。

曰く、変調百物語。

その聞き手となった主人公のちかが、語り手となる人たちから百物語の話を聞いていくことで、語り手とそこに関わる人たちの呪いを浄化し、それとともに、自らが負った災厄の根っこを見つめ、逃げずに相対してゆくようになるのですね。

 
著者の『あかんべえ』と好一対の、健気な少女と幽霊あるいは幽鬼たちが心を触れ合わせ、それぞれに浄化、変容、再生していく物語。

第一話「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」の話から、「お! これは、読ませるじゃないか」と、話の中に引っ張り込まれ、「凶宅」「邪恋」「魔鏡」と読み進めていくうちに、いつしか夢中で読みふけっていました。

とりわけ、「魔鏡」「家鳴り(いえなり)」と続く終盤、物語の第四コーナーの一瀉千里、怒涛の勢いは圧巻。

「魔鏡」に出てくる美しい登場人物は、殊に印象強烈。

怖かったなあ。

上村松園の『焔(ほのお)』という絵に描かれた女性がゆくりなくも思い出されまして、ぞおっとしました。

 
愛する心と憎む心、気遣う心と悪意の心、そうした人の思いというのは表裏一体、紙一重のところにあるのだなあと、本書をひもといていくうちに、しみじみ感じ入ってしまいましたねぇ。

登場人物の伊兵衛の言う、<何が白で何が黒かということは、実はとても曖昧なのだよ>との言葉が、ことのほか印象深く、忘れられません。
 
 
蛇足ながら、「最終話 家鳴り」の中、ある人物が言う「姉さんが来た、姉さんが来た」という台詞のことで。

ここはおそらく、著者の敬愛する岡本綺堂『半七捕物帳』の記念すべき第一話「お文(ふみ)の魂」を念頭に置いています。

本書をはじめ、宮部さんの江戸時代ものの小説の雰囲気、

なかでも怪しの雰囲気には、岡本綺堂の『半七捕物帳』『三浦老人昔話』『青蛙堂鬼談(せいあどうきだん)』などの作品に非常に通じるものがあります。

未読の方は、そちらもぜひ、お読みになることをおすすめいたします。



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2014年03月30日

人々が消え始めている●お勧めのSF小説●宇宙が数学で表せることの不思議さ、あやうさ●エッジ(鈴木 光司)

人が消えていく―それは長野、新潟、カリフォルニアで相次ぎ起こった。

誘拐、家出、神隠し、いやそれとも…

調査をはじめたフリーライターの冴子は未曾有の世界的変異を嗅ぎとる。

彼女の父もまた18年前に忽然と消息を断っていた―。

「リング」シリーズ以来10年ぶりに解かれた封印。

超野心的ホラー小説最終形。



この手の小説に弱い(すぐに惚れる)僕なのだ。

数学の美しさ、素粒子物理学、宇宙物理学、古代文明の謎、カンブリア紀の大爆発、恐竜の絶滅の謎、生命誕生の理由・・・・・・・僕の好きなファクターばかりを集めた小説で、まるで、僕のために書いてくれたのではないかと思われるほど、ドンぴしゃで来た小説だ。

もし、上記の言葉にビビッと来たら、あなたもこの本のファンになるはず。


この宇宙を構成している物質は「星」と「生命」だけだ。

そして、この宇宙は数学(情報)で表現できる。

と言うことは、この世界を構成しているのは「光」と「情報」なのではないか、という大胆な仮説のもとに『エッジ』は書かれている。


その危うい数学の前提が崩れたら、この世界はどうなるのか? という設定で話が進む。

たとえば、ある日、パイ(数学のパイね。π)が無限ではなく(超越数ではなく)、有限の数で(有理数として)コンピューターが弾きだしたら、その瞬間から、この宇宙の成り立ちそのものが狂ってくる。

昨日までの大前提が崩壊したら、宇宙はどうなるのか?

何故、人々が「消滅」し始めたのか?



これらの謎を解きながら僕らの世界を「本当に大丈夫なのか?」と問いかけてくる物語。

ホラーというよりはミステリィかSFか、あるいは、ひょっとしたら「トンでも本」に近い小説だ。(これらのいずれも、僕の好きなジャンルなんだけれどね。)

エンターテイメントとしては最高の小説になっているのが『エッジ』(鈴木 光司)だ。


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posted by ホーライ at 09:59| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・ミステリィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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