2011年05月14日

おすすめの徹夜覚悟の本★フィリップ・マーロウという生き方★『ロング・グッドバイ』レイモンド・チャンドラー (著)、村上 春樹 (翻訳)

おすすめの徹夜覚悟の本★フィリップ・マーロウという生き方★『ロング・グッドバイ』レイモンド・チャンドラー (著)、村上 春樹 (翻訳)


私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。

あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。

何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。

しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。

が、その裏には哀しくも奥深い真相が隠されていた…

大都会の孤独と死、愛と友情を謳いあげた永遠の名作が、村上春樹の翻訳により鮮やかに甦る。

アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞受賞作。


50年代に書かれ、ながらく『長いお別れ』として知られたハードボイルド小説の最高峰と言われてるレイモンド・チャンドラーの作品。

村上春樹による新訳本が出版された。

これは、はっきりいってすごいです。

原作の雰囲気に忠実な村上訳もさることながら、オリジナルのミステリの面白さ、語り部としてのフィリップ・マーロウの圧倒的な存在感にあっという間に引き込まれ、読み始めたら止まらなくなってしまう。

LAでのある殺人事件がきっかけで、重層的に織り成す人間関係の描写から、幾重にも仕込まれたミステリの謎解きも見事。

しかし、もっともすごいのがフィリップマーロウの存在。

村上春樹はあとがきで90ページも費やしているのですが、これだけでほとんど解説本の域に達しており、一冊分の価値があるくらい。

マーロウの行動は、彼の人間としての自我意識の実相をすべて反映していると思えない一方、行動描写は一貫性をもった視点で貫かれている。

ゆえに、マーロウは、実在の人間というよりは『純粋仮説』そのもの、または『純粋仮説の受け皿』であると。

これほど見事な解説には初めてお目にかかった。


マーロウが仮説だからこそ、人間の機微や感情により生じる、あいまいさや柔らかさを一切なくしたような状態、固ゆで卵=ハードボイルドの世界がこれほどの一貫性をもって成立したのか!!!と納得。

マーロウ=ハードボイルド=純粋仮説の受け皿、、、なるほど!!!!


別れるということは、少しの間死ぬようなものだ。(それほどに別れは痛みを伴う) と思っていた。

しかし、別れるということは、これまでの自分の一部が失うことだ。 と知り、言葉の深さにしばし呆然とした。

 
死別の限らず、これまでの人生でいったいそれほどの別れを何度してきただろう。

もしくは、その時その時の別れにそれほどの思いを抱いて来ただろうか。

そう思うからこそ、ロング・グッドバイで描かれる世界観に惹かれ、圧倒的な 苦しさを覚えながらも頁をめくる手が止まらない。

徹夜覚悟で読んでください。



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2011年05月05日

ほのぼの切ないお勧め小説●『気をつけ、礼。』(重松 清)

僕は、あの頃の先生より歳をとった―それでも、先生はずっと、僕の先生だった。

受験の役には立たなかったし、何かを教わったんだということにさえ、若いうちは気づかなかった。

オトナになってからわかった…


画家になる夢に破れた美術教師、ニール・ヤングを教えてくれた物理の先生、怖いけど本当は優しい保健室のおばちゃん。

教師と教え子との、懐かしく、ちょっと寂しく、決して失われない物語。

時が流れること、生きていくことの切なさを、やさしく包みこむ全六篇。


教師と生徒の関係を描いた短編集。

教師って完璧ではない。

聖人君子でもないし、神様でもない。

この作品に出てくる教師はどれもいい意味でも悪い意味でも 一人の人間である。

責めることは出来ないけれど、 もう少しどうにかならないものか・・・と思う教師もいる。

でも、振り返ったときに生徒と生徒の関係はどれも悪い思い出として残っていない。

もちろん現実ではそういうことばかりではないけれど、自分の経験を振り返ってみても生徒のときはすごく嫌いだった先生でも今思い出すとなぜか許してしまえたりしている。


月日はいろんな意味で寛容なんだな。


この本の中で一番心に残ったフレーズ。

「センセ、オトナにはなして先生がおらんのでしょう。
先生なしで生きていかんといけんのをオトナいうんでしょうか」


忌野清志郎が『RCサクセション』時代に歌っていた『僕の好きな先生』を小説にしたようなものです。

大事件も起こらないし、ヒーローもヒロインもいないけれど、「いい話しだな・・・・」と思える心暖まる短編集。

学校の先生って、実は人生を左右するほどの存在だけど、給料は驚くほど安いよな。(僕は教師じゃないけれど)。

幼稚園や小学校の低学年ほど、「いい先生」が必要なので、もっと給料を上げて欲しい、と、これは本書には関係の無い話し。


『気をつけ、礼。』・・・・・先生のいない「オトナ」にお勧めの一冊。


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2011年05月04日

ラストシーンが最も衝撃的な漫画とは?●僕らの世代の男性(女性)なら

僕ら50代が子どもの頃、『スポ根』漫画がはやった。(スポーツ根性漫画)

根性を抜きにしてもスポーツがテーマの漫画が多かった。

『巨人の星』(野球)、『タイガーマスク』(プロレス)、『サインはV』(バレーボール)、『エースを狙え』(テニス)・・・など等。

そんなスポーツの漫画の中、主人公の『生き方』まで少年、少女に見せつけてくれたのが『あしたのジョー』(ボクシング)だ。

そして、僕が「ラストシーンが最も衝撃的な漫画」として選んだのが『あしたのジョー』だ。

下町のドヤ街にふらっと現れた「矢吹丈」。

そのケンカを見て、将来のチャンピオンを見た「丹下段平」。

その二人の出会いから順調に話は進まない。

ある事件から少年院に入った「矢吹丈」。

そこで生涯のライバルである「力石徹」。

そして世界チャンピオンを目指していく過程で出会う、様々なボクサー。

矢吹丈の心の中の葛藤。



この漫画の中で僕が一番好きなシーンは女性の親友「林紀子」から「何故、そんなに苦しんでまでボクシングを続けるの?ボクシングに明け暮れる青春は淋しくないの?」と問われる場面だ。

矢吹丈は答える「実は、そんなに苦しんでないのさ。だって、ボクシングが好きだからな。それに真っ白になるまで燃え尽きたいんだ。」

この一言は僕のその後の人生に中で様々な場面で応援歌になってくれた。


この「あしたのジョー」のラストシーンは様々な憶測を産んだが、とにかく衝撃だった。

「あしたのジョー」の最終回、最後のページをめくると一面に現れるシーン。

僕はその場面を観て、一瞬、息を飲んだ。

そして、ドヤ街の風景から、少年院の場面、挫折していた頃、復活して、いくたの強敵と戦った場面、ここに至るまでの数々のシーンが頭に浮かんだ。

まるで、人が死ぬ時にその生涯が一瞬で走馬灯のようによみがえってくると言われているように。



「あしたのジョー」の全編に描かれたのは、単にボクシングの話ではなく、人間のプライド、挫折と成功の生き方、人生への向かい方、親友と恋人との出会いと別れ・・・様々なテーマが盛り込まれている。、

「あしたのジョー」に出てくるあるキャラクターが死亡した時、現実社会で「本当に」お葬式が行われ、「よど号ハイジャック犯人」は「われわれは明日のジョーである」と声明を残した。


ちなみに大学の「経済学」の試験の時に、問題がさっぱり解けなかったので(白紙)、時間が余った僕はこの「あしたのジョー」の感想を問題用紙の裏にびっしり書いて、それで試験を通してもらった。


日本漫画界でも屈指の漫画。

スポーツ漫画の金字塔。

社会現象にまで影響を与えた漫画。


僕は人生を怠けそうになると、この「あしたのジョー」のラストシーンを思い出す。

僕も「あしたのジョー」になるのさ、ってね。


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2011年05月02日

いろんな意味で重たいがお勧めの本●『決壊』(平野 啓一郎)

2002年10月全国で犯行声明付きのバラバラ遺体が発見された。

容疑者として疑われたのは、被害者の兄でエリート公務員の沢野崇だったが……。

〈悪魔〉とは誰か?

〈離脱者〉とは何か?

止まらぬ殺人の連鎖。明かされる真相。

そして東京を襲ったテロの嵐!“決して赦されない罪”を通じて現代人の孤独な生を見つめる感動の大作。


凄い。
 
ドストエフスキー没して百年余。


この小説の凄さは、ドストエフスキー的な対話を軸に、ネットやメディアに溢れる言説を本物そっくりに活写し、かつ登場人物ひとりひとりの血を、体温を、リアルに濃密に伝えてくることだ。
 
残虐な連続殺人に対して、メディアの新情報を今か今かと待ち、残虐な事実を知るたびに、やり場のない怒りを紋切型の喋りでしか表現できないもどかしさに腹立つ、という状況は、まるで現実そのもので、犯人の少年や家族の言葉は雑誌やテレビというメディアを通して、実在の事件そのものだ。

そこに生身の少年がリアルに描かれることで、コメンテーターや教育者の正義の言説の空疎さが浮き彫りになってしまう。

 
殊に沢野一家の悲劇は、前半のリアルな一家団欒の描写を経て、痛ましく胸に迫り、はからずも平成のスタヴローギンとなってしまう沢野崇の造形は真に魅力的だ。
 

想像や未来の予知などと言うよりは、明らかに現状を写実したものに近い。

本作で語られることは極めて切実で我々の身に、いや心に迫ってくるが、「なぜ人を殺してはいけないか」という問いを初めとして、どれもこれも殆どがどこかで聞いた事ある事ばかりである。

小難しい言葉で飾られた思想のごときものも実質は同じであり、結局のところそれは今の時代の状況、現代人の抱える思いや言葉を代弁し語り、時代精神をそのまま描いただけなのである。

本作のそういう時代精神・時代状況の写実は専ら殺人事件や犯罪をめぐる諸問題や諸言説を対象としている。

責任能力や精神病の問題から警察の取調べの問題まで現代日本で騒がれる犯罪関係、法律関係のあらゆる問題が本作内には凝縮され扱われていると言えよう。

それは私としては高く評価できる極めて意義ある事に思えた。


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2011年02月15日

人生を変えたおすすめの本、僕と人間を外れてみませんか?「こころ」夏目漱石(著)

高校時代の現国の教科書で一部を読んだことがある人が多いのでないだろうか?
僕もそうだ。

高校2年の夏、「こころ」の第3部だけ、国語の教科書で読み、興味を持ったので、文庫本を買い通学列車の中でひとり読んでいた。

この「こころ」と中島敦の「山月記」だけを3年間習う高校もある、と当時の国語の先生に聞いて、「ふ〜〜ん。そんなに難解な小説なの?」と思った。

また、その国語の先生は「日本文学において●●の場面は数限りなく出ているが、この『こころ』の●●の場面を超えた小説はない」と断言していた。

この「●●」に入る漢字二文字については、実際に読んでみて、いったい、どの場面なのかを、想像してみよう。


読めば分かるが、文章自体は全然、難解ではない。

ストーリーも単純だ。

しかし、文章が簡単でストーリーも単純だからと言って、「つまらない小説」かと言うと、そんなことはない。

ここが実はこの小説のすごいところだ。
つまり、日本語を多少、読めさえすれば、人間の「こころ」を読むことができ、さらに、それを考えることができるのだ。

日本人として生まれたなら、また、日本語を読めるというのなら、この夏目漱石の「こころ」を死ぬ前に読んでおいたほうがいいと強く推薦する。


人間はどうして弱いのか。
人間は「いけない」とわかっていても、どうしてその「いけない」ことに陥るのか。
そして、そうなった時に、人間はどうふるまうのがいいのか。

この物語を読んで、僕のその後の人生を決定的に変えたのは、「人を愛するとはどういうことなのか」ということだ。
もし、この「こころ」さえ読まなければ、その後の僕の人生は穏やかで、心安まる人生を送ったはずなのに、と思う。

でもね、人間の人生なんて、そんなものさ。

一冊の本に出会い、ひとりの人に出会う。
こんな簡単なことで、人生がガラリと変わるのだ。

「こころ」のストーリーはきっとネットで調べれば概略は分かると思うが、そんなこと知らずに読んだほうが断然、おもしろい。

さらに、ストーリーを知っているからと言って、また、既に読んだことがあると言って、この物語を再読しない、というのもつまらない。

高校時代に読んだ時と、50年の月日を過ごしたあとで読むと、考えることは「当然」違う。
それを自分の「成長」(あるいは退廃)と感じることができる。

人生を変えてもいいと思っている高校生と、今さら、変わらないよと思っている中年の方におすすめの名作です。

380円で、人生が変わってしまう。

怖いと言えば怖い、ことだ。


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ラベル:夏目漱石
posted by ホーライ at 20:57| Comment(0) | TrackBack(0) | より良く生きるために | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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