私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。
あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。
何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。
しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。
が、その裏には哀しくも奥深い真相が隠されていた…
大都会の孤独と死、愛と友情を謳いあげた永遠の名作が、村上春樹の翻訳により鮮やかに甦る。
アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞受賞作。
50年代に書かれ、ながらく『長いお別れ』として知られたハードボイルド小説の最高峰と言われてるレイモンド・チャンドラーの作品。
村上春樹による新訳本が出版された。
これは、はっきりいってすごいです。
原作の雰囲気に忠実な村上訳もさることながら、オリジナルのミステリの面白さ、語り部としてのフィリップ・マーロウの圧倒的な存在感にあっという間に引き込まれ、読み始めたら止まらなくなってしまう。
LAでのある殺人事件がきっかけで、重層的に織り成す人間関係の描写から、幾重にも仕込まれたミステリの謎解きも見事。
しかし、もっともすごいのがフィリップマーロウの存在。
村上春樹はあとがきで90ページも費やしているのですが、これだけでほとんど解説本の域に達しており、一冊分の価値があるくらい。
マーロウの行動は、彼の人間としての自我意識の実相をすべて反映していると思えない一方、行動描写は一貫性をもった視点で貫かれている。
ゆえに、マーロウは、実在の人間というよりは『純粋仮説』そのもの、または『純粋仮説の受け皿』であると。
これほど見事な解説には初めてお目にかかった。
マーロウが仮説だからこそ、人間の機微や感情により生じる、あいまいさや柔らかさを一切なくしたような状態、固ゆで卵=ハードボイルドの世界がこれほどの一貫性をもって成立したのか!!!と納得。
マーロウ=ハードボイルド=純粋仮説の受け皿、、、なるほど!!!!
別れるということは、少しの間死ぬようなものだ。(それほどに別れは痛みを伴う) と思っていた。
しかし、別れるということは、これまでの自分の一部が失うことだ。 と知り、言葉の深さにしばし呆然とした。
死別の限らず、これまでの人生でいったいそれほどの別れを何度してきただろう。
もしくは、その時その時の別れにそれほどの思いを抱いて来ただろうか。
そう思うからこそ、ロング・グッドバイで描かれる世界観に惹かれ、圧倒的な 苦しさを覚えながらも頁をめくる手が止まらない。
徹夜覚悟で読んでください。 (徹夜するぐらい面白い本、徹夜するぐらい面白い小説。)
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