2014年06月18日

脅威のお勧めの小説『ハサミ男』

●お勧めの小説『ハサミ男』

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。

3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。

自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。

「ハサミ男」は調査をはじめる。

精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!

【2005年公開映画「ハサミ男」原作】(講談社文庫)


同じどんでん返し系で比較されることの多い「殺戮にいたる病」に小説としての物足りなさを感じた人向けか?

随所に遊び心を織り交ぜてニヤリともさせてくれる、非常に濃い内容を持った(と言っても読み難くはないし、重くもない)優れたミステリーだと思います。

ラスト数行で唖然としてしまうという意味でのどんでん返し度は「殺戮〜」や「イニシエーション・ラブ」が上ですが、なかなかこちらもビックリですね!

作者のミス・リードに見事に嵌まったままでした。(その辺は「葉桜の季節に君を想うということ」に近いかもです)

たいへん面白かったです!!



犯罪者の脳波が普通の人に比べて違っていることはかなり前から知られていることのようです。

ですが、もちろんそれだけで、犯罪者と正常者に明確な境界線を引くことはできません。

この本の主人公は一種の快楽殺人者なのですが、本文に『君は自分自身に「なぜ」とは問わない。問うのは「どうやって」かだけだ。』というものがあります。

全体を通して、2重人格気味の主人公の心理がよく描けていると思います。

主人公は女子高生を殺したあと、喉にはさみを突き立てるという連続殺人犯です。

しかし、3人目に狙っていた女子高生が、別の誰かに同じ手口で殺されてしまいます。

ここから、主人公の犯人探しへの推理が始まりますが…、最後におおきなどんでん返しが待っています。


犯行自体は重苦しいですがあちこちにユーモアの散りばめられた推理ショーがそれを打ち消してくれます。

読んで損はないと思いますよ。









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posted by ホーライ at 20:53| Comment(1) | TrackBack(0) | SF・ミステリィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月15日

お勧めの小説『殺戮にいたる病』

●お勧めの小説『殺戮にいたる病』


永遠の愛をつかみたいと男は願った―。

東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。

犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。

冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。



惨殺シーンは気分が悪くなるほど残酷、少し悪趣味かなと思った。

しかし、読み易く想像を膨らませる見事な表現力はすごいです。

読み始めに、エピローグで死んだ人は誰なんだろうと考えました。

読み進める内にその人の像は頻繁に変わっていくと思います。

登場人物が少ないので、結末は限られるんじゃないかと考えてました。

しかしラストに近づくにつれ、胃がキリキリと痛むような緊張感を味わいます。

先の展開が全く読めない、躍動感を感じる怒涛の展開。

そしてラストのページを読んで唖然としました。

はぁ?どういう事だ、と。少し考えて、俺は騙されていたと気付きました。

また読み返さねばと思わせる衝撃のラストです。

こんな騙しが用意されてるとは…。

途中で気付いた人は天才です。

全部読んでも混乱しています。なので、もう一度しっかり読み直さねばという気持ちにさせられます。確かに不快な描写もありますが、最後に読んで良かったと思える作品です。








ラベル:我孫子武丸
posted by ホーライ at 16:55| Comment(0) | TrackBack(0) | SF・ミステリィ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

お勧めの小説『阪急電車』

●お勧めの小説『阪急電車』


他愛とないば他愛のない話だ。

隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった…。

片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。

乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。

恋の始まり、別れの兆し、途中下車―人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。


兵庫県の西宮市と宝塚市を結ぶ、阪急電鉄の支線を舞台にした、オムニバス形式の小説。

最初のエピソードは、図書館で同じ本を借りようとしたことをきっかけに男女が出会う、という超古典的な話。

まずは読者をほのぼのさせながら、次の章では、昔の恋人達への当てつけのためにウェディングドレス姿で披露宴に出席する女性を描いた、少し刺のある話が展開される。

なかなか面白く読める小説だった。

見事な舞台設定と場面切替え。

読みやすく、視覚に訴える描写。

わずか8駅しかない阪急電鉄今津線。

ひと駅ごとにニアミスを重ねながら、巧みに主役が交替してゆく。



まずは、往路。

宝塚から西宮北口行き。

ちょっとしたきっかけの男女の出会い。

冴えない友人に婚約者を寝獲られた復讐に燃える美女。

小さい孫を連れている夫に先立たれた老婦人。

乱暴な男に必死に連れ添う女子学生。

ちょっと背伸びしている騒がしい女子高校生たち。

彼女いない歴イコール年齢と彼氏いない歴イコール年齢の2人。



そして折り返し。

しかし、時は流れて半年後。

そしてまた、ひと駅ごとに主役達が切り替わる。

ブランドもののカバンを持つ騒がしいオバサン軍団の失礼な席取り合戦を皮切りに、往路で登場した人たちのその後のドラマが次々展開する。



ドレス。途中下車。燕。携帯電話。ランドセル。ミニュチュア・ダックスフンド。日本酒。


恋。嫉妬。喜び。強がり。寂しさ。涙。そして笑顔。


それぞれの物語が、沿線独自の雰囲気に包まれて、巧みにつながってひとつの世界が形成される。

女流作家らしい細やかな心理描写。

最初の女性の名前が復路の宝塚南口まで伏せられていたり、ちょっとした工夫もいくつかある。


もちろん、これはあくまでお話。

こんな都合の良い出会いばかりありえないだろうなんて、野暮なことは言いっこなし。

阪急今津線に幸あれ。









posted by ホーライ at 16:44| Comment(0) | TrackBack(0) | より楽しく生きるために | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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